「ところでルーク。 動物と話せる力は健在かい?」
いずれ問われると思っていた内容だったので、クラウスの回答は早かった。
「それが・・・・・・無くなってしまったんですよ。残念なことに。僕が成人し・・・・・・」
「えぇー!?」
ルークが叫ぶ。
その特殊な「力」をルーク少年がどれだけ誇りに思って大切にしているかは、言うまでも無く。
まだ幼さの残る顔に、みるみるショックが広がっていったとき、もっと気の利いた答えができなかったかとクラウスは思ったが、言葉は取り返せない。
ルークが円らな瞳に涙をじわりと浮べたのを見、さらにはレイトンとアロマの「あーあ」と言わんばかりの視線を受けて、クラウスはうっと唸った。
***
その後、気まずい空気のままレイトンらと別れたクラウスは、ディミトリーに経過報告をするために、バー・ルースに向かっていた。
人工テムズに沿って歩いて行くと倉庫の並びがあり、その道なりに右に曲がれば、川に張り出した目的地が見える。
夕陽を受け、川はオレンジ色の空を映して流れていた。
ボートを繋いでおく桟橋の上に、猫がいた。毛は灰色の虎で、ずんぐりとした体つき。ブルーの目でこちらをジロリとふてぶてしく見た。
ルークとの一件のせいで、思わず立ち止まってしまったクラウスは、猫と目線を合わすようにしゃがんで、おいでと念じてみたが、相手は動かない。
何やってんだろうなぁと思いつつしばしにらみ合いをしていたところ
「猫か」
突如背後から声がして、飛び上がりそうになった。
嫌な予感がしつつ振り向けば、案の定で、ディミトリーが立っていた。
「博士、びっくりするじゃないですか。・・・・・・というか、変装もしないで外に出たら駄目ですってば」
ばつが悪くて、つい早口になる。ディミトリーは、フンと低い鼻を鳴らし、「ちょっと待っていたまえ」と言い残して、バー・ルースに入って行った。
何事かと見ていれば、しばらくして、ディミトリーは、クラウスのそばに戻ってきた。クラウスは、その手がだらりとブラ下げている物体を怪訝な思いで指差した。
「それは?」
「サーモンだよ」
「それは、見れば解ります」
濡れたように光るオレンジの切り身。バーの冷蔵庫から持ってきたのだろう。
ディミトリーは屈むと、猫に向かってサーモンを振って見せ、チッチッと舌を鳴らした。すると、見かけによらぬ機敏さで、猫は駆け寄ってきた。
「ほら来た」
そう言ってディミトリーは、サーモンをクラウスに突き出し、「ん」と短く言って促した。思わず受け取ると、さっと立ち上がってまたルースに戻っていく。
「えぇ、ちょっと」
素手でサーモンを掴む気持ち悪さが思考を乱す。猫に投げやって、脂でぬるつく指を上着で拭いつつ、クラウスは疑問符を大量放出した。
――あぁ、というより、報告があるんですって。
ディミトリーの背中を追って、クラウスが駆け出すと、後ろで猫が一声啼いた。
<end>
博士とクラウスの愉快な?日常風景。
博士は優しい人じゃない?
レイトンと最終決戦の時、地雷の場所を当てるやつで、ペーパーにお茶目な細工しちゃったりとかね。結局はったりだったりね。
てか、なんて裏切られまくりなんだ。(クラウスにポールにビルに・・・広い意味でクレア)